誤適応は、適応とほぼ同様のメカニズムを持つが、長期的・大局的には不適応となるような適応をさす。(このように誤適応は不適応とは意味が異なる。)ある状況への適応と誤適応は表裏一体であり、一見、適応と見えることが長い目では不適応であったり、その逆であることもあり、この関係は、さまざまな心理療法において常に気を配らねばならない点になる。誤適応は、心理症状の発症メカニズムであるにとどまらず、治療的営みの中にも容易に入り込む可能性があるからである。さらに、この問題は「単に心の問題」というわけではなく、さまざまな形の感覚・運動・身体変化の協調・統合にとっても基本的要因であり、その再適応過程であるリハビリテーションにおいても避けて通れない問題であると考えられる。痛みを含む身体症状の具体的事例をあげながら、適応過程の基本的性質が日常生活と臨床場面の具体的プロセスに現れる様相を考察する。