将来、医療従事者を目指す学生は基礎専門分野として解剖学を習得することになります。
解剖学の講義は正常な人体構造について一つ一つ専門用語を覚えることに終始し、そこに専門科目という本来の理論体系が薄れる内容になっているのが現状です。解剖学は自然科学の一部門として位置づけられています。したがってその目的は法則性の探究と確立です。つまり「何故このような形態(構造)をとるのか」ということでしょう。そこで、私は、本学の解剖学の講義ならびに実習の一端を紹介することで、目の前にある現象を如何に捉えていくか実習内容を例に挙げて紹介していきたいと思います。
 その一つは骨学実習の内容で、この実習に使用する骨はヒトの骨です。そこで学生は肩甲骨の形、各部の名称を知ることになり、その後、正確にスケッチを描き、骨から何を学び取ったか考えます。学生に対して、教員は肩甲骨を正確な観察することで骨に付着する筋の発達状態ならびに利き手がどちらなのかを考えさせます。ただ、名称を覚えるのに終始するのではなく、物の見方を学生に示すことが、将来医療従事者の一員となったとき、目の前の患者様に対して専門用語の羅列にならず、幅広い考え方を駆使し療法に対して向かい合える姿勢が生まれると確信しております。さらに、本学では、リハビリテーション医学を学ぶ学生に対して、人体解剖学実習を行っています。その内容は医学部学生に課せられている実習内容と変わりありません。驚くべきことは、全身の筋を自らの手で剖出し、正確に観察する実習回数は15回と大変多く、この実習回数は医学部学生の実習回数より多いということです。
 本学におけるこのような実習を通して、学生は解剖学に対して解剖学用語の暗記物であるという批判を含めて、今まで以上の見方をしなければならないことに気付かれると思います。個々の事例の記載から、理論を基礎とした説明科学に脱皮しなければいけないということです。人体の基本構造を追及し、理解することに努める姿勢が求められます。